教室紹介
教室の歩み
本学微生物学教室は、日本医科大学微生物学免疫学教室より赴任された吉田耕作教授が初代教授として昭和48年に開講された。当時の教室はブドウ球菌を根幹とした研究が活発にされた。昭和49年、大学附属病院開設に当っては、吉田教授と共に赴任された高橋助教授が臨床検査部細菌室の設計、諸準備を担当し、その後、細菌検査科長を兼任した。昭和50年から昭和63年頃まで多くのスタッフが海外へ留学し、当教室へ成果を持ち帰った。また、その間にミシガン州立大学San Clemente教授が客員教授として、フランスのクロード・ベルナール大学よりDr. Chomaratが研究留学として当教室でブドウ球菌の研究に従事した。平成元年、菅沼助教授は臨床検査医学教室より当教室に移籍し、新たにウイルス学研究の施設を設置し、細菌学のみならず、ウイルス学にも研究領域が広がった。平成2年の秋に突然、吉田教授がお亡くなりになるという不幸がおとずれた。翌年、平成3年4月に東京慈恵会医科大学第二内科から嶋田甚五郎教授が第二代教授として赴任された。嶋田教授が微生物学教室を担当なさるようになってからは、応用医学的色彩の濃い抗菌薬の作用や活性評価に関わる研究が加わり、研究内容も大きく変貌することになった。当時、吉田教授時代から引き続いて、大友俊充助教授(平成8年3月退職。その後、玉川大学教授・早稲田大学大学院教授)、一幡良利講師(平成8年3月退職。現、筑波技術大学・名誉教授)、碓井之雄助手(後に講師昇任。平成9年3月退職。その後、東京医療保健大学教授)、大島赴夫助手(平成6年9月退職。その後、食品薬品センター秦野研究所食品衛生事業部長)が、研究・教育など教室の運営に尽力されていた。さらに平成6年に金光敬二助手(平成13年3月退職。現、福島県立医科大学教授)が、平成7年7月からは賀来満夫助教授(平成11年2月に退職。東北大学教授を経て、現在東北医科薬科大学特任教授)が就任した。大友助教授、一幡講師の退職後、平成9年には山本啓之講師と竹村 弘助手が、平成12年には原田志津子講師(平成13年3月退職。その後、国立感染症研究所ウイルス第一部主任研究官)が就任し、教室の研究内容も臨床感染症学、環境微生物学、ウイルス学に関する研究と多彩になってきた。嶋田教授在職中は、日本感染症学会、日本化学療法学会など全国規模の学会長を歴任され、また学内においては大学病院の診療協力部門としての感染制御部を立ち上げるなどの、学内外での多大な貢献をされた。
平成13年3月に嶋田甚五郎教授が定年退職され、その後任として中島秀喜教授が第三代教授として同年5月に鹿児島大学から赴任された。これに伴って教室の研究テーマも、抗菌化学療法や臨床微生物学の研究に加えてウイルス学、特にエイズ治療薬の開発を目的とした研究が加わることになった。それ故に、研究室内にP2およびP3レベルの培養実験室を作ることとなり、また、細胞培養機器や解析装置、高速超遠心機など多くの実験機器の搬入が行なわれた。
この時の教室構成員は、山本啓之助教授(平成14年9月退職。その後、海洋研究開発機構上席技術研究員)と竹村 弘講師(助教授、准教授、病院教授を経て、現在は第四代主任教授)、寺久保繁美研究技術員、高橋美穂秘書であった。その後、平成14年4月から東海林洋子講師(平成16年4月に助教授昇任)と草野秀一助手が、さらに平成15年4月には三好 洋助手(現在は特任准教授)が就任した。加えて、山崎里美、乘松美貴がアルバイトの実験補助員として勤務し、大学院生、他大学や企業からの派遣研究員を迎えて、日々にぎやかに教育および活発な研究活動を行う教室に発展していった。その後、平成18年2月には草野助手が鹿児島大学助教授になり退職し、また東海林助教授も同年4月に退職した。それにともない4月から浅井大輔助手(平成29年12月講師、現在昭和薬科大学微生物学准教授)が、7月からは金本大成助手(平成19年10月講師、現在昭和薬科大学微生物学教授)が赴任することとなった。秘書の高橋の産休の間に中井梓が秘書として教室事務担当の代理を務め、また、山崎の退職に伴い、平成23年5月より中島二如(旧姓岡村、現在は研究技術員)が実験補助員として加わった。平成29年3月に寺久保研究技術員(現在は非常勤研究技術員)が退職、同年4月に金本講師が昭和薬科大学微生物学教授になり退職した。
平成31年3月に中島秀喜教授が定年退職され、その後任として竹村 弘が第四代教授として同年4月より微生物学教室を主催することになった。令和2年1月から大神田敬助教(令和3年11月講師)、さらに同年4月から越川拓郎助教が就任した。令和2年9月に浅井講師が昭和薬科大学微生物学准教授になり退職した。令和4年4月より以前当教室に在籍していた碓井之雄客員教授が本大学の形成外科再生医療学寄付講座より異動された。令和5年3月に寺久保非常勤研究技術員が退職され、令和5年10月に浅井幸里が秘書として加わり、現在に至っている。
2024年4月
聖マリアンナ医科大学 医学部
微生物学
主任教授 竹村 弘
教育・研究・診療・将来の発展に関して
(1) 教育
当教室では、より充実した学生教育を行うことを念頭に担当者と教育内容を吟味している。微生物学が担当しているのは、生体防御ブロック講義と生命機能実習3(感染と生体防御)実習の他、免疫ブロック、感染症シリーズなどで感染微生物が病因となる領域である。その中で、細菌・真菌感染症、抗菌薬療法に関わる部分は主に竹村主任教授が、検査法や薬剤開発に関する基礎医学領域は三好特任准教授が担当している。2年生に行う実習では、実地臨床に直結した内容で、細菌学的検査法、分子生物学的検査法を教室員全員で担当して行っている。また、4年生のICMでは、竹村主任教授が感染対策をテーマにしたOSCEとして、個人防護具(PPE)の着脱を中心に指導を行っている。その他、竹村主任教授、三好特任准教授、大神田講師がアカデミックスキルズや実践医学の評価、竹村主任教授、大神田講師、越川助教が5年生のBSLでのグラム染色実習などの学生教育に携わっている。
(2) 研究
竹村主任教授が種々の抗菌薬の作用機序と活性評価に関する研究、三好特任准教授がRNAウイルスの宿主・病原関係の解明に関する研究、大神田講師が薬剤耐性菌に対する併用療法を評価する研究、越川助教が真菌と細菌による相互作用の解明に関する研究を行っている。これらの研究において、研究助成金の交付を受けている。また、P2およびP3レベルの実験室が設置されており、共同研究として他大学、研究機関、民間企業との協力体制を強化し、現在も研究活動を進めている。
(3) 診療
本来基礎医学教室として発足した微生物学教室であるが、病院内の感染制御と情報収集を業務とする感染制御部の部長を竹村主任教授が兼務している。また、院内における感染症に対する診断や適切な抗微生物薬の投与アドバイス、コンサルテーション等の実施、感染症地域ネットワークの拠点を担う感染症センターにおいて、副センター長を竹村主任教授が担当している。
(4) 将来の発展
本学は私学医科大学であり、当教室の目的も、良医を育成し、社会や病気に苦しむ個々の患者さんに還元できるよう、臨床医学に通じる基礎医学領域の研究、いわゆるトランスレーショナル・リサーチを推進することである。今後も、学内外との共同研究を進め、大学院生や研究生も本学出身者に限らず、広く多くの研究者に門戸を開き、ますます教室が発展していくことを目指している。
2024年4月
聖マリアンナ医科大学 医学部
微生物学
主任教授 竹村 弘