MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に関する総合情報・研究成果
Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus (MRSA): Research and Comprehensive Information
聖マリアンナ医科大学 医学部 微生物学講座
MRSAとは
MRSA(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)は、mecA遺伝子(もしくはmecC遺伝子)を保持することによりβ-ラクタム系抗菌薬に対する耐性を獲得した黄色ブドウ球菌であり、医療関連感染症および市中感染症の重要な原因菌である。本来、黄色ブドウ球菌は市中に定着しており、古くから市中感染症の主要な原因として知られてきた。当然、医療関連施設へも患者とともに侵入したが、1960年代にMRSAが登場するとその疫学は一変した。
<MRSAの疫学的変遷>1. 1960年代:MRSAの出現と蔓延MRSAは1961年に初めて報告された。1980年代に入ると抗菌薬が高頻度に使用される医療環境は、多剤耐性菌であるMRSAにとって絶好の足場となり、世界的な蔓延(HA-MRSA)を招いた。 2. 2000年代:CA-MRSAの拡大2000年代以降、市中における抗菌薬使用の増加等を背景に、医療と関係のない健常者からもMRSAが検出されるようになる。特に米国を中心に拡大した市中感染型(CA-MRSA)であるUSA300クローンは、その高い病原性をもって世界的に流行し、現在では医療機関内にも浸透している。 3. 現在:One Healthの視点抗菌薬が使用される家畜領域においても特有の家畜関連MRSA(LA-MRSA)が検出されており、特にmecAホモログであるmecC遺伝子が家畜から初めて同定されたことは、畜産現場が耐性菌発生母地として重要であることを示唆している。加えて、ペットや環境からもMRSAが検出されるに至り、いまやMRSAはあらゆる環境で検出され循環していることが分かってきた。 |
こうした状況は、従来の「医療関連施設」に限定した感染対策の限界を露呈しており、医療・市中・家畜・自然の全域における定着の管理・制御、すなわちワンヘルスアプローチが不可欠となっている。
黄色ブドウ球菌の二面性
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、ヒトの皮膚や鼻腔の常在菌であり、通常はヒトと細菌が均衡を保つ共生関係にある。しかし、宿主側の免疫状態や皮膚バリアの破綻、外傷、医療的介入など環境条件の変化により生体内に侵入し、感染症を引き起こす。常在菌でありながら病原体として振る舞うという二面性は、本菌の大きな特徴である。
黄色ブドウ球菌感染症の病態
黄色ブドウ球菌は、皮膚・軟部組織感染症から菌血症、感染性心内膜炎、肺炎、骨・関節感染症に至るまで、多様な感染症を引き起こす病原菌でもある。
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黄色ブドウ球菌の病原性
MRSAは、薬剤耐性という特徴に加え、多様な病原因子、宿主との相互作用、バイオフィルム形成、遺伝学的多様性など、微生物学的にも臨床的にも重要な研究対象である。
MRSAの薬剤耐性機構と分類
耐性機構
MRSAはmecA遺伝子がコードするPBP2'(PBP2A)産生することによりすべてのβラクタム系抗菌薬に耐性を示す。
| MEMO: 関連記事 → 黄色ブドウ球菌における抗菌薬の作用機序と耐性機序(微生物ブログ) |
SCCmec type
mecA遺伝子周辺領域の遺伝子群であるmec遺伝子複合体と組換え酵素遺伝子であるccr遺伝子複合体の組み合わせにより、現在では多くのタイプに分かれている。日本で検出されるのはSCCmec type II、IV, Vなど。mecCはSCCmec type XI。
| MEMO: 関連記事 → SCCmec type (微生物ブログ) |
MLST
| MEMO: 関連記事 → MRSAのゲノム構造(微生物ブログ) |
MRSAの治療
抗MRSA薬
| MEMO: 関連記事 |
耐性機構
黄色ブドウ球菌には様々な耐性機序がある。
| MEMO: 関連記事 → 薬剤耐性機序の種類と獲得様式(微生物ブログ) |
MRSAの疫学
様々なクローンが検出される。
| MEMO: 関連記事 → 本邦で分離されるMRSAクローン(微生物ブログ) |
HA-MRSAとしての対策
MRSAの伝播経路
| MEMO: 関連記事 → MRSAの伝播経路(微生物ブログ) |
CA-MRSAとしての対策
CA-MRSAの広がり
| MEMO: 関連記事 |
ワンヘルス
黄色ブドウ球菌はヒトのみならず家畜やペットなど多様な宿主に適応し、かつ乾燥環境や自然界でも高い生存能力を保持する。この「宿主の壁を越えた高い定着性」と「環境への適応力」は、本菌がワンヘルスの視点から捉えるべき象徴的な病原体であることを示している。本菌は、医療・健康・畜産、そしてそれらを取り巻く自然環境の境界を繋ぐ存在となっている。
| MEMO: 関連記事 → ワンヘルスアプローチに基づく感染症研究(研究内容) |
MRSAの研究
| MEMO: 関連記事 → 黄色ブドウ球菌の病原性及び薬剤耐性機構に関する研究(研究内容) |
NGSを用いた全ゲノム解析
重症例・難治例から分離されたMRSA株の全ゲノム解析を積極的に行なっています。
| MEMO: 関連記事 → 次世代シークエンサーを用いた病原体のゲノム解析(研究内容) |
CA-MRSAの増加
日本固有の高病原性CA-MRSAであるST22-PTクローンが増えています。
| MEMO: 関連記事 → 研究紹介(微生物ブログ) |


